白山市指定有形文化財[工芸品]

梵鐘 宮崎彦九郎尚義作


一口
享保2年(1717)
総高130.0 口径70.0
村指定有形文化財 昭和63年4月7日指定
市指定有形文化財 平成17年2月1日
願慶寺 白山市吉野 タ25−1

鋳銅製。釣手としての竜頭の竜は力強くふんばり、ロを開いてやや高目の笠形を噛む。鐘身は胴が強く張り上帯細く、下帯とも無文である。袈裟襷は幅広く、乳は四段四列、縦帯の撞座の上部に位牌形を設け、その内部
に蓮華座をともなった「南無阿弥陀佛」の名号、草の間に牡丹唐草文を陽刻。撞座は16葉蓮弁で蓮肉に子房を鋳出する。池の間4区の内2区に次の陰刻銘がある。

(一区)
奉竒進願主
釈 了休
釈 了覚
釈尼妙休
釈 了恵
釈尼妙恵
同惣同行中
(二区)
加賀國石川郡東谷惣道場
願慶寺常住物也
享保第丙酉歳
宮崎彦九郎
尚義

製作者の宮崎彦九郎尚義は、二代寒雉である。京釜師の辻与次郎の孫と伝えられ、初代寒雉である彦九郎義一の養子となり、梵鐘や茶の湯釜を製した。享保13年(1728)没する。菩提寺は金沢市野町三丁目の少林寺である。


 白山市三屋野(旧鳥越村)に伝わる話に、願慶寺梵鐘鋳造の時に、吉原村の
親家(オヤケ;金持ちのこと)が、鋳造寺に純金を入れると音が良くなると聞いて、
純金を寄付することを思い立ったが、人に言付けたのではネコババされるかもし
れないからと、自分で思い金を金沢まで持って行き、煮えたぎる銅の中に、躊躇
することなく「ドボン」と放り込んだという話が、今に伝わっている。
 だから、吉野様の鐘の音色が良くて、昔はお天候の状況によっては二里も離れ
た遠くの村まで、鐘の音が聞こえたという